Oui!好き、し、無い。

※「ウイスキー死なない」の男性陣サイド
※ナチュラルに虎杖くん生存設定

久しぶりに同じ任務になったので、任務の話を聞いてから割と伏黒に会えるのを楽しみにしていた。お互い別の任務が終わってからなので待ち合わせ場所を決めてそこで落ち合う手筈にしていたが、伏黒が姿を現すなり少しどんよりとした雰囲気を纏っている。なまえさんと喧嘩でもしたのかな、と勝手に見当をつけて、このあと飲みに誘うか、とこれからの予定を立てる。とりあえず、先にしなければいけないのは目の前の任務を完遂することだ。
二級の呪霊が数体という任務は虎杖だけでも伏黒だけでもなんとかなる気はするが、補助監督の新田さんの話では念のため保険をかけてこの二人に依頼した、とのことらしい。呪霊が潜んでいるという廃墟のショッピングモールに足を踏み入れしばらく歩くと、確かにこの呪霊の気配の多さを一人で対処するのは無理だったかも、と思う。
事前調査で呪霊の親玉がいるショッピングモール内のゲームセンターまで足を進めている途中、手持ち無沙汰で伏黒に話しかけた。

「なぁ、伏黒」
「なんだよ」
なまえさんとなんかあった?」
「……………………別に」

沈黙の長さが肯定だということに彼は気づいていないのだろうか。それに本当になにもないときはもっと違う解答をしてくるだろうし。

「あとで話聞いてやるから、飲み行こうぜ」
なまえさんにも連絡入れとく」
「ん!」

じゃあ、ちゃっちゃと除霊しちまうかぁ、と肩を回して準備体操を始める。目的の場所はもう目の前だ。ほかのショップの跡地とは異なって禍々しい雰囲気が出ているのが見て分かる。隣で伏黒も玉犬を出しているのが確認できたので、乗り込む準備は万端らしい。
件のゲームセンターに一歩足を踏み入れると耳障りな騒音が辺りに響く。数が多いことがネックなだけで、呪霊自体は単純なものらしい、と聞いているのでひたすら目の前に現れる呪霊を殴ってダメージを負わせていった。

▽ ▽ ▽

「んで?なにがあったんだよ」

ショッピングモールでの任務を終えて、外で待っていた新田さんにお願いして新宿で下ろしてもらう。もう夜もかなり更けていて、このままオールのコースでもいいかもしれない、なんて思った。店員に適当に注文を通して、少しすると酒がやってくる。
法的にお酒が飲めるようになってまだ数か月ではあるが、虎杖は生ビールと伏黒はカシスソーダを飲むのが毎回の流れで。ちなみになまえさんは伏黒と二人で外で飲むときはビールをばんばん飲むらしい。家入さんたちもそうだけど、五条先生たちの世代の女性って酒に強いイメージがある。

「プロポーズ、断られた」

それだけ言って机に伏してしまった伏黒の発言に思わず目を見開いてしまう。いや、いつか結婚したいとは聞いてたけど。同棲までしてるしいつか結婚するんだろうな、とは思ってたけど。

「……まじ?」
「マジに決まってる」
「ちょっと待って待って。この話俺だけで聞いちゃダメな気がする。ほかの人も呼ぼ」
「好きにしろよ……」

よほど参っているらしく、まだ一杯目だし、普段なら酔わないカシスソーダですでに目が座っている。本格的にやばいのでは。
急いでメッセージアプリを使ってこういうことの話を聞いてくれそうな人をピックアップしてメッセージを送る。二人とも構わない、と返事がすぐに来たので場所の位置情報を送り、タイミングよく注文していたおつまみを持ってきた店員にもう二人来ます、と告げておいた。ほかに部屋がないから、と大きめの個室に通してもらっていたのはラッキーだろう。

なまえにフラれたって!?!?」
「五条さん最低ですよ」

少しすれば近くで任務だったという五条先生とナナミンが来てくれた。狗巻先輩や乙骨先輩にも声はかけたけれど、二人とも任務で九州だと言っていたのでさすがにこの場には来れない。
登場して開口一番に伏黒の傷をえぐっていく五条先生は相変わらずだと思う。もしかしてなまえさんがこの人を嫌ってるのってこういうところなんじゃ。
元々向かい合うように座っていた俺の隣に五条先生が座り、伏黒の隣にはナナミンが座った。

「フラれてはない、です」
「すでに出来上がってんじゃん。恵」
「プロポーズ断られただけです」
「もっと悲惨じゃないですか」
「二人ともそれ以上伏黒をいじめるのはやめてあげて!」

大人が寄ってたかって教え子を弄り倒しているのを見るとさすがに居た堪れない。でも、二人ならなまえさんと近い年代だし、話が聞けるかなぁと思って呼んだ次第で。

「それでさぁ、先生とナナミンから見てなまえさんの今回の返事ってどうなの?ふたりとも高専時代一緒に過ごしてるからなまえさんのことよく知ってるでしょ」
「まぁね」
「否定はしません」

伏黒の話を聞いたナナミンが考える素振りをして、それから言葉を発した。

「ちなみに、なんて言って断られたんですか?」
「まだ結婚はできないって」

素直に解答する伏黒におお、と驚嘆しながら、酔ってる伏黒は素直になる、と脳内でメモする。

「じゃあ大丈夫だよ。あと数年してからもう一回言ってみな。頷くから」

あっけからんと言う五条先生にぎょっとする。そんな簡単に言っていいのかな、と若干疑り深くなってしまった。伏黒も同じことを思ったようで据わっている目のまま、五条先生を見る。

「数年っていつっすか」
「そうだねー、具体的には真希が禪院家の当主になったあと」
「なんで真希さん?」
「七海説明してあげて」
「自分でしてくださいよ」

話を丸投げされたナナミンがはぁ、と大きなため息を吐いて、それから俺たちに説明してくれる。
話を要約するとこうだ。なまえさんの禪院家での立場というのは、一度出奔したこともありそこまで高くないこと。ぱっと見、当主補佐なんてしているから高い立場にいるように見えるけど、あれも保守派の傀儡としてついているだけだそうで。いろいろあったこともあり、彼女は保守派に逆らえないらしい。

「そうなんだ。でもそれが伏黒のプロポーズ断る理由としてはなんか違和感」
「悠仁。なまえはね、ずっと禪院家に大事なものを人質に取られてるんだよ。で、真希が当主にならない限りはそれはずっと続く。だから、耄碌した爺たちがいなくなるまでは動けないの」
「ふぅん……」

だから、恵もそこまで落ち込まなくていいと思うよ、タイミングが早すぎただけと言葉を締めた。

「でも、あの人お見合いとか未だに来るし、行ってるんですよ。俺はそれが嫌です」
「そこは仕方のないことだと割り切るしかないでしょう」
「そうだよ。今更なまえがほかの男と結婚するとは思えないし。保守派が無理やり動かさない限りは」
「俺はそこが心配なんですよ、あの人がまたどこかに行ってしまったらどうしようって、」

話す度にどんどん沈んでいく伏黒をなんとか励ます方法はないものか、と考えても思い浮かばない。こういうときってどうしたらいいのだろう。さすがに自分はまだ誰にも求婚をしていないし、そういう相手もいない。

「伏黒くん、彼女の同期だから言いますけど」
「はい」
「最悪な事態にはならないと思いますよ。本当に嫌な場合はそこから抜け出すことを選ぶ人ですから、彼女」
「七海良いこと言う~」
「茶化さないでください」

ナナミンの言いたいことが伝わったらしい伏黒はさっきよりは元気を取り戻したようだった。なまえさんの同期のナナミンがいうと説得力が違うな。

「恵にできるのは辛抱強く待つことだけだよ。大丈夫、今更向こうも恵と別れる気ないと思うし」
「はい、」
「ああ見えて、彼女は伏黒くんのこと好きだと思いますよ」
「……はい、」

話が一段落すると、相談に乗ってもらったしこの場は俺が全部出します、と伏黒が言ったことにより五条先生が容赦なく食べ物を注文していたのは見なかったことにしようと思う。教え子にたかる気満々なのはちょっと大人げないなぁと、思っても口には出さなかった。飲める体質だったら多分高いお酒とかたくさん頼んでたんだろうな。ソフトドリンクがそこまで高くない店でよかった。五条先生が下戸な体質に感謝したことは胸の内に秘めておこう。