すべてを思い出して、ボーダーに復帰(再入隊?)することになったのはいいけれど、自分が居たときとは何もかもが変わりすぎていて、置いてきぼりを食らっている。それを迅に相談すると、烏丸くんが支部長(って呼ぶように言われた)のおつかいで本部に行く用事があるため、それに付いて行っていろいろ教えてもらえばいい、という話になった。烏丸くんには頭が上がらない。二人で学校帰りにそのままボーダーへと向かう。隣を歩きながら、明日の宿題の話とかをしながら基地まで歩いていく。
「今日もバイトとかあったんじゃないの?なんかごめんね」
「いや、今日は休みだし大丈夫」
まぁ、いつもみょうじには宿題でお世話になってるしこれくらい気にするな、と言われた。烏丸くんいい人だなぁ。桐絵を真顔で騙すところ以外は。桐絵が黙れやすいのも原因だけど。
「道は覚えられそうか?」
「うん、大丈夫」
物覚えはいい方なので、一度行けば覚えられる。しかし、ボーダーの基地って大きいよなぁ。昔はもっと小さかったのに。そんなことを思いながら歩いていると、ボーダーの基地の入口に到着した。扉の開け方を聞いて、試しにやってみる。
「ほんとにあたしのトリガーでも開くのかな?」
「宇佐美先輩は申請しといたから大丈夫って言ってたけど」
恐る恐る自分のトリガーを指定の場所に宛てると、ドアが開いた。おお、すごいな。ハイテクだ。中もかなりのハイテクだった。
「俺は忍田本部長に会いに行く予定だけど、みょうじは?」
「あ、あたしも忍田さんたちに挨拶して来いって言われてる」
「じゃあ一緒に行くか」
「うん」
ボーダーの中に足を踏み入れるのは初めてだ。同じくらいの年代の子がたくさんいる。まるで学校みたいだな。さっきからなんとなく視線を集めている気がするけれど、みんなの視線を追うと行き着く先は烏丸くんで。ここでもモテモテなんだね、烏丸くん。
烏丸くんの案内で司令部とやらに辿り着いた。ドアが開き中を覗くと見知った姿がちらほらと。
「ご苦労」
「失礼します。これ、うちの支部長からです」
「確かに受け取った。?なまえ何をしているんだ、入っておいで」
「し、しつれーします」
忍田さんに呼ばれて中に入る。城戸さんと忍田さんと目が合った。あとなんとなく見たことがある人が二人ほど。一人の人は全く分かんないや。指示された場所に立たされて、城戸さんが言葉を発する。
「みょうじなまえ、本日付で玉狛支部への復帰を認める」
「みょうじ、了解」
城戸さんからの言葉に了解を唱えると、忍田さんが笑いながら話しかけてくれた。伝わってくる感情も昔と変わらずとても暖かいものだ。
「しかしなまえも大きくなったなぁ」
「忍田さんオジサンみたいな発言だよ、それ」
「なまえ!」
ごめんなさーい、と昔と同じような謝り方をしてしまった。少しだけ忍田さんの怒気が強まるのも懐かしい。あたしと忍田さんの間で和やかな空気が起こったけれど、それを城戸さんが止めた。
「……もういいのか?」
「うん、もう大丈夫」
その言葉だけで全部伝わったと思う。城戸さんから伝わってくるのは心配、それだけだった。城戸さんともなんだかんだ付き合い長いし優しいことは知っている。今になって思うとやっぱりあのときは心が成長していなかったんだと思う。でも、まだつらいけど我慢できないわけじゃなくなったから、また頑張ってみようと決めた。
「これからは今までの分も働いてもらうぞ」
「了解」
じゃあ、これで挨拶も終わったしボーダーの中案内してもらって帰ります、と言って司令室を烏丸くんと後にした。司令室を出ると烏丸くんが隣で大きくため息をついた。
「何」
「いや、本部長と司令にあの態度ってすごいなって」
「そう?」
昔からあんな感じだったから、少しは改めた方がよかったかな?と自問自答していると烏丸くんがじゃあ次はランク戦のブースの説明するから、と案内してくれる。桐絵から説明を聞いてから気になって仕方なかったやつだ。どんな風になってるんだろ。しばらく歩くと、大きなモニターのある部屋に着いた。大きなモニターに小さなモニターがたくさん並んでいて、今行われている個人のランク戦が見られるらしい。おお、結構みんな戦ってるんだね。
「詳しい説明とかは?」
「ランク戦のことは桐絵が教えてくれたけど、使い方?は習ってない」
「じゃあ俺と試しにやる「あー!京介は女子連れてる!」
烏丸くんの言葉に遮るように男の人の声が割って入った。声の方を振り返ると明るい髪をした人に、カチューシャをした人。学校で見たことがある気がする。あれだ、クラスの子たちが騒いでいた――
「出水先輩、米屋先輩」
「おーっす」
そうだ、いずみ先輩によねや先輩。特徴的な見た目だったから顔はよく覚えている。
「何?京介この子とランク戦すんの?」
「いや、こいつうちの新人なんですけど、使い方知らないんで教えておこうかと」
「玉狛に新人?珍しいな」
「てか名前は?あとポジション!」
矢継ぎ早に話しかけられて息をつく暇もない。こんなに目まぐるしいはの久しぶりかもしれない。伝わってくる感情もぐるぐるとめぐっていて少しつらい。苦笑しながら名前を名乗って頭を下げる。
「今日から玉狛に配属になった、みょうじなまえです。ポジションは射手。よろしくお願いします」
「俺は出水公平」
「俺は米屋陽介。よろしくー」
そうだ、と出水先輩が思いついたかのように言う。
「みょうじちゃんはC級?」
「いえ、B級です」
「へぇー!入隊早々B級ってすごいな!実力あるとか?」
「さぁ、どうでしょうかね」
適当にはぐらかしながら、早くこの場を抜け出したい衝動に駆られる。でも、烏丸くんに迷惑をかけるわけにはいかない。ちょっとくらい我慢しなくちゃ。出水先輩たちが有名なのかなんなのかわからないが、たくさんの感情が集まってきていて気分が優れない。
「じゃあさ、得点動かないやつでいいから、俺と戦わない?同じ射手同志さ」
「え?お断りします」
気分が優れなさ過ぎて、思わず即答していた。できれば今すぐ玉狛に帰らせてほしい。嗚呼、桐絵たちに会いたい。