並んで歩いて未来の事をたくさん話そう

「大丈夫?無理しちゃだめよ」
「大丈夫だよ、潔子先輩も仁花ちゃんもいるし」
「こんばんわーっす!なまえ迎えに来ました!」
「じゃあいってきます」
「おう、いってこい」

最後まで心配そうにしていたおばあちゃんをなだめて、西谷が迎えに来たので家を出る。このあとついでに仁花ちゃんも拾って行く予定だ。仁花ちゃんとおばあちゃんの家が近いことに気付いたのはあとからだった。それが分かってからは一緒に帰るようにしている。もちろん西谷もその場にいるけれど。

「仁花ちゃーん!」
なまえ先輩!西谷先輩!こんばんはっ」
「んじゃ行くかー!」

三人で横並びになって歩いて学校に向かう。前回の合宿に参加した仁花ちゃんと西谷の話を聞きながら、事前に情報収集する。音駒との練習試合さえ参加しなかったから、自分の学校の人以外本当に分からない。最悪仁花ちゃんにずっとくっついて居よう……。
学校に着くと既に皆来ていて、夜の学校に若干のテンションを上げつつ、これから合宿だと思うとわくわくする。運転してくれる先生やコーチたちにお礼を言って、バスに乗り込んだ。座席はマネージャーで固まって座った。後ろで男子たちのうるさい声が聞こえる。先生に寝るように言われて、みんな一斉に就寝した。こういうこと初めてだから、興奮する気持ちを押さえ込んであたしも眠りについた。

起きるとすでに東京に着いていて、ぱっと景色を見た感じでは宮城より鉄塔が多いけど雰囲気はあまり変わらないと思った。出迎えは烏野と面識のある音駒高校の皆さんだった。初対面だからお名前が分からない……。日向から聞いた研磨っていう人と田中や西谷から聞いた山本っていう人はなんとなく分かった。あと大地先輩が今挨拶している人がきっと音駒の部長の黒尾さん、かな?楽しそうにしている皆を尻目に、潔子先輩たちと手分けして荷物を降ろしていると、声が聞こえた。

「女子がまた増えている……!?しかも綺麗系、だ、と」
「虎よ、これが烏野の真の実力なのです」
「馬鹿なこと言ってないで荷物運んでよ、田中」

田中の頭を叩く。うん、小気味のいい音だ。西谷なんて率先して運んでくれてるのにね、潔子先輩の荷物メインだけど。

みょうじー」
「はぁい!」

大地先輩に呼ばれて近付くと、黒尾さん?に挨拶するように言われる。

「黒尾、休部から復帰した二年生のみょうじ
「どうもー音駒の主将の黒尾デス」
「烏野のみょうじです。今日からよろしくお願いします」

頭を下げると黒尾さんから握手を求められた。何も考えずに握る。ぎゅうっと握られて放そうにも放せない。なんなんだ?

「黒尾、うちの子からかうんじゃないよ」
「いや、結構タイプだなーって」
「はぁ、」

そう言われたところでどう反応すればいいのか困っていると、見慣れた黒尾さんたちよりも小さな手が現れて、握手していた手が開放される。

なまえ、あの荷物どこに運ぶんだ?」
「あ、あれは体育館って言ってた気がする。バスの中からメモ取って来る」
「おう、頼んだ。大地さんたちスンマセン。なまえ借ります」
「おー」

バスに戻って何をどこに運ぶかリストアップしたものを西谷と一緒に取りに行く。リストを見ながら西谷と並んでそれぞれ荷物を運んだ。荷物を運ぶ度にだんだん合宿の実感が出てきて、口元が少しだけ緩んでいるのが自分で分かる。横を歩いていた西谷があたしが笑っていることに気付いたのか、問いかける。

「なに笑ってんだよ」
「え?あー…しあわせだなって、思って」
「急にどうした?」
「こんな風に部活に出られるようになると思ってなかったから。だから、しあわせ」

あたしがそう言うと、西谷はニッと笑って、満面の笑みで言う。

「少なくとも俺たちが引退するまでは、これがずっと続くんだぞ」
「それもそうだね……。じゃあ、ずっとしあわせだね」
「おう!」
「全国優勝したら、もっとしあわせだね?」
「!今まで以上のしあわせ、見せてやるよ」
「楽しみにしてる!」

二人で笑い合っていると、田中がやってきてなんだなんだ~!?と茶化してくる。それを往なして、空を見上げた。今日もいい天気だ。こんな幸せな日々がまた来ると思ってなかったから、嬉しくてすこしだけ目に映る空が滲んだ。

「おいなまえ!置いてくぞーっ」
「今行くー!」

fin.