懦弱

昔から自分のサイドエフェクトが全く好きではないけれど、コントロールができるようになってきた最近ではこういうことに気づけるのならば、このサイドエフェクトも悪くないかなって思った。
玉狛に泊まり込んだ翌日、食卓に降りるとみんなもう席に座っていてレイジさんの朝食の準備も終わっていた。

「おはよう」
「おはよう!なまえちゃん!」
「陽太郎おはよう、朝から元気だね」

陽太郎の隣が空いていたので、陽太郎の頭を撫でながら席に着いた。幼児ってなんでこんなに元気なんだろう。あたしが席に着いたのを確認すると、支部長がじゃあ食うか、と合図を出したのでみんな一斉にいただきます、と唱和する。今日のメニューはサラダにスクランブルエッグ、ウインナーにパンにスープにカットフルーツ。朝からとてもバランスのいい食事にありつけて有り難い。箸をのばしてスクランブルエッグを掴み、早速食べていると視線を感じた。視線の犯人は迅だ。

「何?」
「いや、なんでもない」
「そう?」

変な迅だなって思ってご飯を食べていると、胸の奥に何かが引っかかる。前にもこんなことがあったような……?すぐに出てこないので、食べながら必死に思い出そうとする。なんだっけ、小さいとき、迅と出会ったときに――。

「あ、思い出した」
「急にどうしたんだ」

レイジさんの言葉をよそに席を立ちあがって、迅の隣に立つ。こっちの行動の意図に気づいたのか抵抗される気配を感じたので、その前に迅のおでこに触れた。熱い。

「やっぱり。迅風邪引いてるでしょ」
「そんなことないよ」
「あたしに嘘ついても意味ないって、知ってるよね?」

一睨みすると迅は降参したらしく、両手を挙げた。そうやって大人しくしてなさいよ。おでこに当てた手をそのままにもう片方の手を自分のおでこに当てて比較する。うーん、かなり熱い。

「結構熱いね?いつから風邪引いてたの」
「えーっと……、」
「うん、もういい。レイジさん、この人ベッドに縛り付けといて」
「任せろ」

レイジさんに迅のことを任せて、一息ついたところで時計を見るとすでに家を出なければいけない時間が過ぎていた。朝食を頬に詰め込んで、カバンを掴んで陽太郎と支部長に行ってきます、と告げて基地を後にした。
学校に着くと本当にぎりぎりで、かなり焦った。全力で走ってきたからか汗も止まらない。汗をハンカチで拭っていると、烏丸くんと時枝くんに話しかけられた。

「おはよ」
「おはよう。今日ギリギリだったね」
「二人ともおはよう。いやさ、朝からバタバタしてて」
「なにかあったのか?」

烏丸くんは昨日支部に泊まっていたのを知っているので、怪訝そうな顔をされた。

「迅がさ、風邪引いててさー。朝から抵抗するもんだからレイジさんに投げてきた」
「へー、迅さんでも風邪引くんだね」

意外そうな顔をして時枝くんが言う。そんな意外なことなのだろうか。昔の迅は、それはそれは風邪を引きやすい体質で、いつも病床の迅を桐絵と二人で馬鹿にしていた記憶しかない。始業のチャイムが鳴り、担任の先生が入ってきた。自分の座席に着き、烏丸くんと時枝くんも自分の席に着いた。

迅大丈夫かなぁ。今日は家にまっすぐ帰る予定だったけれど、支部によって帰るかな。