後会

適当なB級やA級の人たち を捕まえては少しずつポイントを稼いでいく日々を送っている。最も、出水先輩や米屋先輩、緑川くんとのランク戦が多いんだけれど。あの人たちあたしの姿を見るなりランク戦しようぜ!って言ってくれるから有り難い。ほかのB級にも声をかけてみたいんだけど、なんだか逃げられているような気がする。怖くないですよー、なんて言っても通じるわけではないから放っておいてるけど。
目の前を真っ赤な隊服の人が通った。あ、あれ嵐山隊じゃん。時枝くんや佐鳥くんは見えない。二人の姿を探すけれどいないようだ。その人の背中を凝視していると、後ろからぱちん、と頭を叩かれた。誰よ、と思ってぐりんと後ろを向くと、見慣れた青のジャージとサングラスに感情を読ませない見覚えのあるやつ。伝わってくる感情は呆れだった。

「なにしてんのお前」
「迅」
「傍から見たらすげぇ変だよ、おまえ」
「うるさい」

あたしたちの声に反応したのか、目の前の真っ赤な隊服の人がこちらを振り返った。あ、准くんだ。桐絵のせいで勝手に准くんと呼ばせてもらっている。桐絵の前で嵐山さんって呼ぶと准でいいのよ!って言われるから。

「迅!それになまえ!」

……ん?なんで呼び捨てにされているんだろう。嵐山さんから伝わってくるのは喜びで、なんでこんなに喜ばれているんだ。どっかで会ったことあったっけ?あたしは桐絵から話を聞いたことくらいしかないぞ。あたしの表情が微妙だったのか、迅がそれとなく聞いてくれる。迅のそういうところ好きだよ。

「あー、嵐山。なまえと面識あったっけ?」
「ないな!桐絵に写真をいつも見せてもらっていたからな!他人の気がしなくて」
「あたしも嵐山さんのことはいつも桐絵から伺ってます」

むしろ普段は准くんと呼ばせてもらってます。

「そうか!よければ名前で呼んでくれ。おれだけ呼ぶのもなんだか申し訳がない」
「あ、じゃあ准くんで」
「改めてよろしく頼む」
「こちらこそよろしくお願いします」

頭を下げると、すぐにあげてくれ、と声をかけられた。お言葉に甘えて頭を上げる。すると、准くんと目が合った。慈愛のような温かい気持ちが伝わってくる。なんでこんな感情を抱かれているんだろう。まっすぐに顔をずっと見られて照れてくる。イケメンに見られるのは恥ずかしい。

「あたしの顔になんかついてます……?」
「あ、いや、きみが戻ってきてから、桐絵がいつも嬉しそうにきみの話をしてくれるから、おれも嬉しくて」

照れたように笑う顔がお兄さんの顔をしていた。桐絵もいいお兄さん持ったよね。実際は従兄弟だけど。

「そうですか」
「きみがいなくなってずっと寂しがっていたから」
「すみません、」
「いや!過ぎたことは気にしないでくれ。きみは戻ってきてくれたし、桐絵も元気になってくれておれは嬉しいんだ。これからはまた桐絵のことをよろしく頼む」
「はい」

手を差し出されたので、その手を握り返した。すると手を握ったまま、准くんは付け足すようにあたしの耳元で小さな声で囁くように言った。

「あと、迅のこともよろしく頼むな。君がいなくなって、迅も同じくらい落ち込んでいたから」
「え、」
「じゃあおれはこれから任務だからこの辺で失礼するよ」
「あ、はい、お疲れ様です」

准くんの背中を見送って、見えなくなると隣に立っていた迅を見た。あたしの視線に気づいてこちらを見る。

「なに?」
「あたしがいなくて寂しかったの?」

ワンテンポ後にあたしの言葉の意味が分かったのか、迅が顔を真っ赤にしてその場から走って逃げた。面白いものを見た。あんな迅は初めて見るかもしれない。すかさず、あとを追いかけた。