出水先輩に指定された場所に行くと、年上っぽいすらっとした男の人が立っていた。この人も待ち合わせだろうか。その人から少しだけ距離を取って待ち合わせをしている人を待つ。顔を知らないから難点だけれど。それっぽい人を見かけたら話しかけたらいいか。
「おい」
「はい?」
鋭利な視線で射殺されるかと思った。目の前の男の人は眉間に皺を寄せて不機嫌そうにあたしに話しかけてきた。
「お前がみょうじか」
「あ、ハイ。もしかして、」
「二宮だ」
――待ち合わせしていた人がこの人だったみたいです。
二宮さんと出会うことになったのは出水先輩の計らいで、個人ランク戦のポイントがいい感じに貯まってきた時だった。もう少しでマスターに届く、というところで出水先輩に提案された。
「だいぶ勘とやらも戻ってきたみたいだし、いっちょ二宮さんと戦ってみたらどうだ?」
「あぁ、前に言ってた人ですよね」
「そう。個人総合ランク二位。射手としては一位の二宮さん」
どんな相手にも容赦無ぇから実践経験積むにはいい相手だと思うぞ。そう出水先輩に言われては仕方ない。ここらで噂の二宮さんと戦っておくか、ということになり出水先輩が中継ぎをしてくれて今日さっそく戦ってもらうことになっていた。
二宮さんと無事合流できたので二人でブースに向かい、個人ランク戦をすることになった。もちろんポイントは変動制のもの。うまくいけば今日でA級に上がれたりしないかな、なんて考えている。A級に上がれたら玉狛第一に入隊していい、と支部長に言われた。
二宮さんとそれぞれ個室に入り、準備が整ったところで転送される。マップは市街地A普通の住宅地だ。射手同士の戦いでは相手の姿を視認してから接近戦に持ち込むタイプとレーダーからおおよその位置を特定してやみくもに弾を飛ばして相手の行動範囲を制限する方向に持ち込むタイプがいる。二宮さんはどっちかわからないので、ひとまず後者を選んで様子を見る。大きなトリオンキューブを生成して細分化した。あとは空に向けて手あたり次第メテオラの雨を降らせる。おおよその位置に降らせた弾がどうやら二宮さんに当たったらしい。開始時よりも移動のスピードが遅い。レーダーで特定した位置に一定の距離を空けて近づいていき、腕からトリオンが漏れ出している二宮さんに視認される前に容赦なく速度重視のメテオラを飛ばした。流れ星のように目の前から光が上空へ飛んで行った。そしてアナウンスが流れる。
「トリオン体破壊、二宮緊急脱出」
先手必勝で勝っただけだからなんともだけど、自分でもかなりうまくコントロールできたと思う。自分もトリオン体から元に戻って部屋を出ると二宮さんが仁王立ちして待ち構えていた。
「おい、もう一回だ」
「ポイント変動なしでもいいなら」
「構わん」
また部屋に戻って、今度は十本勝負をすることになった。結果は勝ったり負けたりの四勝六敗。やっぱり射手一位の実力は伊達じゃない。ランク戦を終えると二宮さんはこれから防衛任務ということでそこで分かれた。こんな年下に勝ったり負けたりして苛立っているかな、と思ったけれどそんなことも一切なく、なにか考え込んでいるような感情が伺える。怖く見えるけれど、案外負けず嫌いなだけなのかもしれない。